Tokyo Station City

歴史を象徴する丸の内駅舎エリア、情報を発信する日本橋口エリア、未来を象徴する八重洲エリア、そして充実した店舗が広がるエキナカエリア、それらが東京駅という新たな街―東京ステーションシティを構成している。

1914年（大正 3）年に開業した丸の内駅舎は1945(昭和20)年の東京大空襲で被害を受け、戦後応急的に復興された姿のまま60年あまりが経過していた。国の重要文化財に指定され、現役の駅舎として使われている建物を創建当時の姿に保存・復原するという他に類を見ないプロジェクトは約5年に及ぶ工事を経て2012年に完成した。
現存している外壁や内蔵鉄骨を可能な限り保存しつつ、戦災で失われた3階部分やドーム屋根を復原。化粧レンガや天然スレートなどの仕上げや装飾は、調査や資料を基に創建当時の姿の厳密な再現を目指した。一方で、将来にわたる安全性を確保するため、駅舎を仮受けして地下階を新設し、駅舎と地下階の間に免震アイソレーター352台とオイルダンパー158台を設置している。

丸の内駅舎の主に1階南部分と2、3階は、ヨーロピアンクラシックを基調とした東京ステーションホテルとなっている。南北に細長いフロア形状、高い天井高、既存躯体の凹凸など丸の内駅舎の特徴を活かすことにより、多様なルームタイプを持つ個性的なホテルとなった。かつて屋根裏だった中央部はガラス屋根から光が降り注ぐアトリウムに生まれ変わった。
東京ステーションギャラリーには丸の内北口1階のエントランスからエレベーターを使って入館する。2階の展示室では創建時の鉄骨煉瓦造の壁を見ることができる。

日本橋口に直結して建つサピアタワーはR&E(Research and Education)センターをコンセプトとした複合ビル。コンファレンス機能とホテルを備え、さまざまな研究・教育・ビジネスをサポートしている。ＪＲ東日本グループのビルとして初めてCASBEE(建築環境総合性能評価システム)のSランク認証を取得した。

丸の内側が歴史の象徴であるのに対し、八重洲側はツインタワーとそれらをつなぐ大屋根により先進性や先端性を表現している。グラントウキョウ　ノースタワーは低層部が百貨店、高層部がオフィスの超高層ビル。低層部と高層部の外装デザインはメタルマリオンの有無やガラスの質感などにより異なる表情を生み出している。低層部は東南面のバックパネル部にＬＥＤ照明を設置し、乳白ガラスを通して柔らかな表情を出している。八重洲側中央部にあった百貨店の営業を止めないために2期に分けて施工された。
グラントウキョウ　サウスタワーは高層階への垂直動線としてシャトルエレベーター方式を採用し利用の快適性向上と昇降路が占めるヴォリューム減少を図った。外装は、高透過ガラスにメタルマリオンのついたカーテンウォールとし先進性を表現した。
「光の帆」をデザインコンセプトとしたグランルーフは、ツインタワーを結ぶ歩行者デッキを全長約240mにおよぶ巨大な膜屋根が覆う。デッキ上は壁面緑化や店舗が配された憩いの空間となっている。

東京駅構内には飲食や土産物店にとどまらない多種多様な店舗があり、まさに「街」そのものである。なかでも、コンシェルジュ機能や外貨両替なども備えて地下中央コンコースに2007年に誕生したグランスタは、その後丸の内地下中央口改札外を含むまでに順次拡充。2020年には北地下自由通路の整備によって生み出されたスペースにＪＲ東日本最大規模のエキナカ商業空間「グランスタ東京」が加わるとともに、新たな改札口や吹き抜けのあるシンボリックな待合空間「スクエアゼロ」も整備され、駅利用者の利便性がさらに向上した。