太海駅

  • 建築主:東日本旅客鉄道
  • 所在地:千葉県鴨川市
  • 階数:地上1階
  • 延べ面積:23.18m²
  • 構造:木造
  • 竣工:2022年12月

海辺に立つ小さな駅舎

内房線の太海駅は千葉県鴨川市太海に位置する。源頼朝が身を隠したとの伝説もある景勝地、仁右衛門島(にえもんじま)や、大正時代から昭和時代にかけての洋画家・安井曽太郎が「外房風景」を描いた宿も近くにあり、南房総国定公園エリアに含まれる。
旧駅舎は1924(大正13)年の開業から約100年間、修繕を重ねて使われてきたが、老朽化のため建て替えとなった。駅無人化に伴い、延べ面積141㎡のうち約8割が使用されておらず、今回の計画にあたっては建物規模の最適化を実現しながら、木造によるパッシブデザインの建物とすることが求められた。

土地の特性から考える駅舎デザイン

駅は海辺に立地して、コンセプトを「駅から海を眺められる環境をいかし、自然を感じ取ることができる駅」とした。山と海、東西二つの美しい眺望に向かって開いた空間構成とし、駅前広場側からは海を、待合室側からは山を眺めることができる。
海からの卓越風を取り込み、ホーム側に設置した待合室に効率的に導くラッパ状の形状とすることで、非空調の待合空間を実現。外壁は、塩害対策に加え、メンテナンスフリーで長い間の風雨に耐えられるチタン亜鉛合金板を採用し、構造の木材をくるむようなファサードとした。塩分の付着を防ぎ、雨水が流れるよう片流れの建物形状とし、屋根の傾斜に合わせて建物が傾いたようなデザインとすることで、通常の木造建築とは一味違うユニークな外観となった。

木造建築の柔軟性を生かしたプロジェクト

建物端部を鋭角に収めることで、木造でありながらシャープで洗練されたフォルムを実現させている。外観は金属的な印象を与えるが、内観は対照的に、木造らしさを感じられる温かい空間とした。
特徴的な外観デザインは、様々な与条件を満たす形状から導き出されたボリュームをベースに、壁を傾けるというアイデアを組み合わせることで実現している。建物規模に最適化しながらもインパクトのある外観デザインとすることで、太海の新たなシンボルとして生まれ変わった。