JR新小岩南口ビル

  • 建築主:東日本旅客鉄道
  • 所在地:東京都葛飾区
  • 階数:地上6階
  • 延べ面積:7,413.54m²
  • 構造:S造
  • 竣工:2023年10月

駅周辺のさらなるにぎわいに貢献

総武線の新小岩駅周辺は東京都葛飾区の南に位置するにぎわいあふれる地域である。2023年10月1日、「JR新小岩南口ビル」が開業を迎えた。
この建物は新小岩駅南口に直結しており、1、2階は商業施設「シャポー新小岩」、3~5階は「ジェクサー・フィットネス&スパ新小岩」、6階は葛飾区の行政サービス施設「えきにこわ」で構成されている。駅改札階とビルのメインエントランスがある1階に、南北自由通路を貫通させることで、駅を中心に南と北をつなぎ、まちや商店街との回遊性を高めて駅周辺のにぎわいと利便性向上に貢献することを目指した。

生活に彩りと安心・安全を

地域の伝統工芸品である江戸小紋からデザインの着想を得て、生活に彩りを添える駅ビルをコンセプトとした。ファサードは、白を基調に駅前に明るく清潔感のある表情をつくり出し、地域になじむスケールを心がけた。外壁の凹凸は、周辺への圧迫感を低減するとともに、新小岩のまちの雰囲気やにぎわいを表現。窓は、内部の活動がまちに表出しやすい配置とし地域とつながるための仕掛けにもなっている。まちの玄関口をイメージした大庇は、木の柔らかさと温もりを感じる南北自由通路の天井と一体となるように計画。駅ともまちともつながりを感じられる設計とした。
エントランス壁の一部を緑化して、駅周辺に自然を感じることができる場もつくった。地震や水害などの災害発生時には、建物の一部が帰宅困難者の一時滞在施設としても利用される予定である。

駅とビルとの連続した動線計画

葛飾区との協定による南北自由通路整備は、ビルに先行して2018年に暫定開通したもの。それまでは、南北それぞれ改札口があったため通り抜けることができなかったが、改札内に入らなくても駅を縦断することが可能となり、2023年には全線開通した。
駅と周辺地形との高低差があるため、バリアフリールートとしてのスロープとビルのメインエントランスに直接アクセスできる階段を併設し、旅客流動に対するサービス基準の確保とビル利用者の利便性を高めている。

伝統文様を内装デザインのモチーフに

商業施設の環境デザインは「小粋CRAFTS」をコンセプトに鉄道、工業と共に発展してきた新小岩の歴史が育んだクラフトマンシップを現代の形で再現した。天井は小宮康孝作「菱紋」をデザインモチーフにモダンに再構築した表現とし、床は下町の石畳を彷彿とさせ、歩行感とテナントデザインとの調和を両立させるナチュラルな空間構成となるよう配慮した。自由通路の木質感や壁面緑化と合わせ建物全体で統一感を持たせたデザインとしている。