大館駅

  • 建築主:東日本旅客鉄道
  • 所在地:秋田県大館市
  • 階数:地上2階
  • 延べ面積:1,298.99m²
  • 構造:S造
  • 竣工:2023年10月

秋田杉の産地とハチ公のふるさと

大館駅は、秋田県大館市に位置する交通の要衝である。初代駅舎は明治32年に開業し、その歴史は秋田駅よりも古い。大館市は、曲げわっぱなどで知られる秋田杉の産地や、秋田犬(天然記念物)飼育の本場としても知られており、「忠犬ハチ公」の故郷でもある。
ハチ公生誕100年の2023年10月、大館駅周辺整備計画の一環として新駅舎が開業。大館市の都市施設(駅なか交流センター)とあわせて建てられ、会議室も備えている。駅前の大館市観光交流施設「秋田犬の里」との連携やイベント動線を考慮して設計した。

市民をつなぐ 駅なか交流施設とコンコース

機能として必要最低限のボリュームにすると、旧駅舎よりも存在感が薄れてしまうことや、まちへ顔を向ける南面と東面の駅舎の顔が作りにくいことが課題であったが、1階の駅なか交流センター イベントホールを高天井に設計。また積雪を考慮し、屋外設備機器置き場をインナーバルコニーとして、駅舎全体を矩形の総二階建ての外形とすることで解決した。高天井にしたことで、大開口のガラス面のある開放的な駅舎となり、待ち時間も快適に過ごせて地域住民も集うスペースとなった。天井ルーバーはイベント時の音響にも配慮している。また、矩形の外形は、落雪対策と設備機器置場の配置や雪対策にも一役買っている。

大館らしさを感じられるデザインとマテリアル

新しい駅舎のデザインについては、大館の名産や土地の雰囲気をくみ取り、「木目を基調とした地域住民がつどえる駅舎」をコンセプトにした。外観は木調の軒をイメージしたデザインとし、「秋田犬の里」のデザインと一体感を出すため、また、鉄道と交通の要衝としての記憶にちなみ、外壁にアクセントとしてレンガ調の磁器質タイルを配した。内観にも各所に秋田杉や木調の仕上げを使用し、温かみのある雰囲気を演出。北国の盆地という気候の厳しい地域のため、外部には耐久性を期待できる堅実な材料を使用している一方で、内部の手に触れられる場所には自然素材を使用した。待ち時間にワークスペースとしても活用できるカウンター等には地場産材の秋田杉を使用。大館市の名産品を陳列したコーナー壁面には、大館市内で産出される十和田石の原石を使い、床面も十和田石調の床タイルを使用している。